『食の歴史』(プレジデント社) – 著者: ジャック・アタリ – 松原 隆一郎による書評

書評総合

『食の歴史』(プレジデント社) 著者:ジャック・アタリ
米仏二極化する胃袋の未来
音楽・医学から時間・愛・死・地政学・テクノロジー、そして海まで。数え切れないテーマと膨大としか言いようのない知識で人間社会の未来を占ってきた碩学(せきがく)が、「食」を軸に過去を振り返り、進むべき道を訴える野心作。いわば胃袋が語る人類の通史である。
この密接な、宇宙的規模とさえ言える人間と食との関係は、実は猿人からホモ・サピエンスが漸進的に出現したときから始まった。この関係は、言語の使用から火の利用まで、人類のおもな急激な変化の源泉になった。……人間と食とのこうした関係からは、都市、帝国、国家の権力掌握の過程も広く説明できる。歴史と地政学は、何と言っても食の歴史なのだ。
「はじめに」でこう著者が述べる本書は、コンパクトな一冊に壮大なる社会史も展開している。食にかんする世界史的な出来事を次々に述べる文体だから、一見しただけでは豆知識の羅列に見えるかもしれない。たとえば乾燥パスタはイタリア生まれではなく、旅するアラブ商人が携行していたものがシチリア経由でイタリアに普及した。また医学博士ケロッグが神経を刺激せず性欲を減退させる目的で食べ物から味気を抜き取って開発したのがコーンフレークである(ミルクボーイの漫才はあながち無根拠なイヤミではないようだ)、等。それはそれで食指の動く小話だが、それ以上に見逃せないのが、こと食に関する限り、世界史はアメリカとフランスの二大勢力が描いてきたという強烈な自負だ。本書は前半で、この自負通りフランス料理術に収斂するヨーロッパの食文化を紹介して

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