『ヨーロッパ中世の想像界』(名古屋大学出版会) – 著者: 池上 俊一 – 本村 凌二による書評

書評総合

『ヨーロッパ中世の想像界』(名古屋大学出版会) 著者:池上 俊一
人間や社会を左右したイメージ
ヨーロッパ中世について、日本人が思い浮かべるのは、強大なキリスト教会であったり勇ましい十字軍であったりする。昨今では観光旅行の機会もあり、パリのノートルダム寺院やフィレンツェの大聖堂などを身近に感じる人々もいる。しかし、その中世社会に生きていた人々の心の中までのぞくことなどできるのだろうか。この心性史という至難の課題に敢然と切りこんだ本書は、わが国の西洋史研究の最新にして最高水準の成果と評価していいだろう。現代人にとって、想像界(イマジネール)と聞けば、どこか現実離れした世界にしか思えない。だが、ヨーロッパ中世にあっては、想像界は現実とかけ離れた世界ではなく、まさに人間や社会を動かす大きな源泉になっていたという。中世の人々は森を切り開き、耕地を拡げながら、狼を退治し、猪を豚にするなど野獣を家畜として手なずけた。野獣は人間と家畜の仇敵(きゅうてき)で悪魔のごときものだったが、聖フランチェスコのように神の被造物として人間にも動物にも親しむ者もいた。動物イメージは善悪あるいは正邪の両面からとらえられ、動物のヒエラルキーは人間社会を忠実に反映するものとして利用されたという。ところで、人間が肉体と魂から成るなら、魂はどんな姿をしているのか。そこに、奇跡譚、異界の夢、幻視などが結びつき、魂とそのイメージを中軸として想像界が浮かび上がってくる。そこでは、ギリシャ・ローマの理知、ゲルマンの習俗、ケルトの夢想、キリスト教の霊性などが競い合い融け合っていくのだった。中世の人々のイメージ世界は、太陽や雨

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