『本当の武士道とは何か 日本人の理想と倫理』(PHP研究所) – 著者: 菅野 覚明 – 本郷 和人による書評

書評総合

『本当の武士道とは何か 日本人の理想と倫理』(PHP研究所) 著者:菅野 覚明
命を賭して戦う男たちが現場で生みだした思想
口舌の徒は信用できない、という感覚をかつての武人は持っていた。織田信長は若手をまず実戦に投入した。卓越した知力を有していても、襲ってくる敵に対処できなければものの役には立たない。将来を嘱望された万見仙千代(森蘭丸の前任者)は、無名の戦いで死んだ。反対に、初陣で首級をあげた蒲生氏郷は娘を与えられた。時代がくだり西郷隆盛は、外交にも経済にも通じた大隈重信を評価しなかった。幕末の血なまぐさい争いに参加しない、エリートだったから。逆に、どう見ても能吏型ではない山縣有朋は重んじた。死線をくぐり抜けた、叩(たた)き上げだったから。実戦を生き抜く。それは並大抵の営為ではない。敵と向き合ったときに、少しでも脅えたり慌てれば命はない。「常在戦場」の精神のもと、いつも死と向き合い、腹を決めねば一歩も先に進めない。そうした覚悟を定めた「戦う男たち」は、やがて「現場の感覚から生まれた思想」を形成していった。それこそが本物の武士道であり、本書はそのありようを、実例を挙げながら、わかりやすく説き明かす。中世史を学ぶ私は、武士とは「戦う人」であるとともに「統治する人」だと学習している。武士道が意識された江戸時代、武士は自分の家を守るだけでなく、農民や町人の生活にも責任を持っていたはずだ。では武士道は統治とはどう関わるのか。そこをぜひ知りたいが、ないものねだりというべきか。私と解釈や意見が違うところは多々あるけれど、叙述に迫力があり、ぐいぐいと引き込まれる。それは戦う武士の高潔さを説く

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