『最期の言葉の村へ:消滅危機言語タヤップを話す人々との30年』(原書房) – 著者: ドン・クリック – 武田 砂鉄による書評

書評総合

『最期の言葉の村へ:消滅危機言語タヤップを話す人々との30年』(原書房) 著者:ドン・クリック
踏み入る者が「終わり」を作る
パプアニューギニアの熱帯雨林の奥深くにあるガプンという村に三〇年以上通い、あと数十年で消える独自の言語・タヤップ語の変遷を追いかけた一冊。消えゆく言語の稀少性を記録しようと試みるが、外界と交流しない村人にとって、言語の消滅は自分たちのアイデンティティと直結しない。「言語の多様性」を捉えることができるのは、「パノラマ的に全体を見ることのできる専門家」だけ。なぜ言語が消えるのか? 人々が話さなくなるから。このシンプルな答えを「保存すべきだった絶妙な芸術作品」と持ち上げるのは、いかにも身勝手なのだ。そもそも、ガプンの人々は言葉を「共有」しているのではなく、自分のバージョンで話しているとの意識を持っていた。常に自分だけが所有する自分の言葉という感覚がある。村人は何度もやってくる著者を幽霊だと思い、村に変化をもたらす秘密を持つ人間だと認識されていく。「戻ってきた死人」として、死んだ父への手紙を託されることさえあった。観察する様子を観察され、茹でたサゴゾウムシや孵化する直前のツカツクリの卵などのごちそうを振舞われる。やがて、村に強盗が現れ、持ち物を略奪され、村民が銃殺されてしまう。自分が村に滞在したことで命が失われ、生活が揺さぶられたことになる。関与することの弊害に悩み続ける。村の人口が大幅に減少したのは、一九四二年に、とある軍隊が現れたこと。当初は塩とサゴヤシを交換するなど友好的だったが、補給路が断たれると、「狂暴で暴力的になり、村人は恐怖に怯(おび)えた」。結

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