『ガブリエラ・ミストラル―風は大地を渡る』(JICC出版局) – 著者: 芳田 悠三 – 野谷 文昭による書評

書評総合

『ガブリエラ・ミストラル―風は大地を渡る』(JICC出版局) 著者:芳田 悠三
ラテンアメリカが生んだすてきな女
一九一〇年代の南米に一群の女性詩人が輩出する。彼女たちはモデルニスモ(近代主義)の純粋詩に対する反動として、日本でいえば与謝野晶子のように、個人的な愛を奔放にうたった。だがその中で、ラテンアメリカで初めてノーベル文学賞を受けたチリのガブリエラ・ミストラルは、恋人の自殺という個人的体験を昇華させ、生涯独身を貫きながら、幼い者、虐げられた者への愛をうたうことにより唯一普遍性を獲得した。こうした文学史的事実、あるいは長らく教員を務め、その後外交官となり、国連で活躍したといった伝記的事実は、ラテンアメリカ文学に興味を持てば、ただちに知ることができるだろう。けれどその種の断片的知識は、ともすれば高潔なグレートマザーのような人物を想像させてしまう。事実彼女にはそうした側面があったようだが、しかし著者は詩人の生涯に肉薄することで、ステレオタイプなイメージを覆していく。それが可能となったのは、著者が実は夫婦であり、そのため両性具有の眼を持っていること、そして何よりも、実際にミストラルの足跡を辿る旅に出たことによる。巻末に挙げられた参考文献の数は、入手困難という条件をさし引いても決して多いとはいえないが、詩人縁(ゆかり)の地、関係者に直に接したことがそのハンディを十分に補っている。ラテンアメリカの作家の多くと同様、ミストラルも旅人であり、晩年はアメリカに住み、故国にはほとんど戻らなかった。それは単に彼女が外交官だったからだけではない。その放浪が父親の出奔を原因として早くも子供時代か

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