『シマゲジ風雲録―放送と権力・40年』(文藝春秋) – 著者: 島 桂次 – 猪瀬 直樹による書評

書評総合

『シマゲジ風雲録―放送と権力・40年』(文藝春秋) 著者:島 桂次
勇名はせた番記者の回顧録
一種のキワモノと呼ばれる部類の本である。通称シマゲジとは元NHK会長島桂次であり、彼は石もて追われるように古巣のNHKを去った。したがって現在のNHK幹部に対する罵倒を、読者は額面通りに受け取らぬほうがよい。それでもあえて紹介するのは、番記者の生態をこれほどみごとに、そしてやけくそ気味に暴露する回顧録は、たぶん今後もおめにかかれそうにないからだ。島が番記者として勇名を馳せるきっかけは、記者嫌いと評判の池田勇人の担当となったときだ。まだ三十歳前の島は、朝から晩まで押しの一手で池田邸へ通い詰め自分を印象づけることに成功した。つぎに「貧乏人は麦を食え」と失言して四面楚歌となった池田に、公共の電波を使って「歯に衣着せぬ正直な発言」と「偏向報道」をプレゼントする。池田は「よく言ってくれた」と感激、すっかり島を信用する。このあたりの職業倫理抜きの“機転”は随所に出てくる。その後、島は池田派の夜の総会で、前尾繁三郎、大平正芳、鈴木善幸などをさしおいて池田の右隣へ座るまでになった。また大平を通じ佐藤派の田中角栄とも昵懇の間柄になった。池田は死ぬ前、「島、宏池会をへんなふうにしないよう、頼んだぞ」と派閥の将来さえ託される。「池田内閣から鈴木内閣までの間、私はそんなわけで閣僚人事などにある程度の影響力を持っていた」というのだ。NHKが「郵政省渋谷出張所」と揶揄されるのは、予算と受信料値上げについて監督官庁の指導を受け国会の承認が必要だからだ。自分のような永田町に顔が利き手練手管を

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