『「飢餓」と「飽食」―食料問題の十二章』(講談社) – 著者: 荏開津 典生 – 山折 哲雄による書評

書評総合

『「飢餓」と「飽食」―食料問題の十二章』(講談社) 著者:荏開津 典生
本書の叙述は控え目で、地道なものだ。しかし注意深く読めば、そこに描きだされている問題が重かつ大であることがただちにわかる。アフリカなどの「飢餓」地帯と日本などの「飽食」世界を比べて読むと、事態の深刻さがさらに否応なく迫ってくる。豊富なデータがかんで含めるような解説とともに登場する。権威ある調査報告書や独創的な研究が、平明なタッチで冷静に紹介されていく。私などのズブの素人にもわかるのだから、その人知れぬ労苦はとても貴重なものだ。つまり本書は人口と食糧生産と食糧の分配という、これからの人類にとって欠かすことのできないテーマを徹底的に考えぬこうとした試みなのである。人口爆発の歴史と現状、緑の革命の成果、そして飢饉(ききん)の生態学と地球環境学が手を結んで、食糧の安全保障の問題についてまともな提案をしている。しかし私にとってもっとも関心をそそられたのは、食糧消費のパターンを比較した「人はなにをどう食べるか」という章の問題提起であった。すなわち動物性食品を多くとるアメリカ人の食生活と、植物性食品に多くを依拠するインドやバングラデシュなどの貧しい国の人々の暮らしぶりを比べている章だ。たとえばこんな個所はどうだろう。肉や乳製品を生みだす牛には飼料として大量の穀物を食べさせなければならない。そのことによって先進国は、途上国に比べて途方もない食事エネルギーを消費していることになる。ところが面白いことに日本は先進国であるにもかかわらず、食糧消費の水準がアメリカ人やフランス人に比べて低い段階にとどまっているという。それには長い

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