『江南の発展: 南宋まで』(岩波書店) – 著者: 丸橋 充拓 – 出口 治明による書評

書評総合

『江南の発展: 南宋まで』(岩波書店) 著者:丸橋 充拓
海上帝国までのダイナミックな道
本書は「シリーズ中国の歴史」(全5巻)の第2巻である。このシリーズは中国を、草原、中原(華北)、江南、海域の四つの区域に分けて論じる。中国は「東南アジア(海域世界)の北部」と「内陸アジア(草原世界)の東部」が出会う場所なのだ。この広い中国が統一されたのは、わずか4回。中華帝国の模範となる諸制度「古典国制」ができた秦漢、唐、大元ウルス、清朝である。このような大きな見取り図のもとに、従来の「時代輪切りの編成」から離れて各巻が置かれている。とてもよく考え練られた構成だ。本書は、1万年ほど前の長江中下流域の稲作の起源から筆を起こし、モンゴル帝国前夜までの「海の中国」を俯瞰する。第1巻「中華の成立」では、すべての人々が皇帝とだけ君臣関係を結ぶ「一君万民」の古典国制の成立が論じられたが、古典国制の外縁にあたる江南が六朝から隋唐にかけていかに古典国制を継承し経済を起動させ海上帝国(南宋)への道を歩んだかがダイナミックに語られる。著者は、西方もしくは北方に拠点を構え古典国制を掲げて一君万民を貫こうとする中華帝国の「国づくりの論理」に、東方や南方の「人つなぎの論理」である「幇(ほう)の関係」を対峙させる。とてもユニークな発想だ。中華帝国は行政の機能が極小化された小さな政府であり人々の日常にはほとんど関心がない。つまり「専制と放任が並存する社会」なのだ。他方、中間団体にあたる村やギルドの力が弱いので人々は幇の関係における自力救済に頼るしかない。また日本や西洋は嫡長子単独相続・世襲的身分制度により居処・生業が

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