『ケインズとケンブリッジに対抗して (ハイエク全集 第II期)』(春秋社) – 著者: F・A・ハイエク – 松原 隆一郎による書評

書評総合

『ケインズとケンブリッジに対抗して』(春秋社) 著者:F・A・ハイエク
俗説を打破する経済政策論争の真実
「ケインズかハイエクか」という対比を、しばしばマスコミで目にするようになった。もっぱら「大きな政府か小さな政府か」というイデオロギー対立をめぐる記事で引用されてのことだ。だがそれが「財政(公共事業)主義か構造改革か」とまで敷衍(ふえん)されるなら、二人にとっては迷惑でしかないだろう。というのもJ・M・ケインズは『繁栄への道』でこそ不況時の失業対策として公共事業を提唱したが、生涯にわたり重視したのは金融政策の方だったし、F・A・ハイエクは自由主義市場論者と呼ばれるものの、『自由の条件』にせよ強調されたのは慣習や法という「構造」の下での市場秩序だったからだ。そんな誤解が現れるのも、もとをただせば彼らの論争が正確に理解されないまま俗説として流布しているから。そして本書こそ、ケインズとハイエクが直接に論を闘わせた1930年代前半のやりとりを中心とする論文集の待望久しい初訳なのだ。ハイエクの英文は晦渋(かいじゅう)を極めるだけに、訳者の労をねぎらいたい。事情は込み入っている。ハイエクが微に入り細にわたる執拗な分析と批判を(長すぎて前・後編に分載された)書評で展開したのは、ケインズの『貨幣論』(1930)をめぐってであった。ケインズはすぐさま反論を寄せたが、議論もそこそこに「無慈悲な論理学者が誤った前提から、最後はいかに精神病院に行き着くことになりうるかを示す、驚くべき一例」と罵倒する始末。その後、年末年始に何通もの私信で論争は続き、ケインズは耐えきれなくなったのか鬼才、P・スラッフ

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