『三島由紀夫の美学講座』(筑摩書房) – 著者: 三島 由紀夫 – 谷川 渥による解説

書評総合

『三島由紀夫の美学講座』(筑摩書房) 著者:三島 由紀夫
解説
三島由紀夫の美学、三島美学といった表現が、ほとんど常套句のように用いられる。実際、三島由紀夫ほど「美学」という言葉と結びつけられてきた作家はいない。その場合、「美学」には、三島の作品の美的世界とか、三島の美意識あるいは美的倫理とかいずれにせよかなり漠然とした意味がになわされていたように思う。それは、三島の書き物だけでなく、その行動、生き方(あるいは死に方)が問題にされるときでも基本的に変わらない。三島が自刃したころに大学の美学科に進学していた私は、当時さかんに発せられていた三島美学なる表現にいさきか違和感をおぼえたものだった。美学は、文字どおり学問的に用いられるべき言葉だと思ったのである。しかし学としての美学を専攻し、またそれを講義し、私なりにいろいろと著述をするようになるにつれて、西洋の哲学史に出自をもつこの美学という言葉を、かえってもっと自由に、もっとゆるく用いてもいいのではないかという気持ちが強くなってきている。美学は、既成の諸概念を整理することも大事かもしれないが、美や芸術についてみずから問いを発し、言説としての可能性を模索する主体的な営みとしてしかありえないからである。三島美学でけっこう、もしそれが美や芸術についての主体的な問いの、思考の軌跡であるならば。結局、こうして私は一般的に流布している三島美学なる表現に立ち戻ってきたともいえるわけだが、さてそれでは、三島自身が美や芸術について、どう考え、どう語っていたかということになると、意外にまとまった本がない。文学論集、演劇論集のたぐいはあるが、美学論集のよ

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