『女性にとっての職業――エッセイ集 【新装版】』(みすず書房) – 著者: ヴァージニア・ウルフ – 森 まゆみによる書評

書評総合

『女性にとっての職業――エッセイ集 【新装版】』(みすず書房) 著者:ヴァージニア・ウルフ
ものを書く女たちの肖像
年収五百ポンドと鍵のかけられる自分の部屋――女性が作家になるのにそれは最低限必要だとヴァージニア・ウルフはいった。『ダロウェイ夫人』『燈台へ』『波』の名作を書き、五十代の終わりに神経衰弱で自殺した彼女は、ものを書く女性の苦悩に、一貫して関心を寄せた。冒頭のスピーチ「女性にとっての職業」で、十シリング六ペンスあればシェイクスピアの全戯曲を書けるだけの原稿用紙が買えますと聴衆を挑発しながら、率直に作家であることの苦悩を語る。慎しみ深くなくてはならないというタブー、自分の意見や願望をもたず他の人びとの願望や意見にそって考えようとする誘惑、それを「家庭の天使」とウルフは名付け、インキ壺を投げつけてこれを殺さなければ、真の作家にはなれないと断言する。夫や子供の世話、妊娠や出産、男性の偏見、男がつくってきた言語……、余暇をもつ中産階級の女性にも障害は大きい。本書『女性にとっての職業』(みすず書房)の六十三頁以降はそれでも〈語りたい自己〉を持って自己表白した女たちの肖像画である。たとえば女権論者メアリ・ウルストンクラフトの「きわめて決然としていると同時にたいへん夢見がち、ひどく肉感的であると同時にきわめて理知的で、おまけにその大きな捲き毛と、ロバート・サウジーが出会ったうちでもっとも表情に富むと思った大きな輝いた眼をした美しい顔」。結婚は「あらゆる所有権の中で最悪のもの」といい、「同棲は愛を鈍らせる傾向がある」といったメアリは結局、妊娠によってウィ

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