『百年の孤独』(新潮社) – 著者: ガブリエル・ガルシア=マルケス – 星野 智幸による書評

書評総合

『百年の孤独』(新潮社) 著者:ガブリエル・ガルシア=マルケス
〈ラテンアメリカ文学〉というジャンルを世界に認知させた傑作である。といっても、単に中南米地域の文学を普遍的なレベルに高めたというだけではなく、〈ラテンアメリカ性〉とでもいうべき性質を新たな世界の可能性として示しえたから、傑作なのである(それが何であるかは作品を読んで考えて欲しい)。そしてそれは、発展途上国の文学に強烈な自意識をもたらした。ブエンディーア一族がマコンドという村を築いてから百年で消滅するまでの歴史が、奇想天外なエピソードを織り込んだいわゆる「魔術的リアリズム」を駆使して語られる。表題どおり、ブエンディーア家は百年の孤独を運命づけられているのだが、その原因は、血の濃い家系のいとこ同士であったホセ・アルカディオとウルスラが愛し合い、それがもとで殺人を犯して故郷を出奔したことだ。新天地に建設したマコンドで、一族は同じ名前、同じ出来事を延々と繰り返し、最後は再び近親相姦を犯してこの世から消える。以上の要約からもわかるように、この小説は同じ構造を反復させることで「物語」にどっぷり浸かり、時間性を奪われる。その語りの裏には、時間性を剥ぐことで記憶を永遠にとどめておきたいという欲望が垣間見える。彼らの歴史は、この小説に書かれたような形以外では消し去られてしまうからだ。常にオーソリティ=権力、正統と認める側から、無意識下へと追いやられるからだ。だがその一方で、この物語はすでに書かれたものであることが明らかにされる。読み終わった瞬間、物語が書かれた紙は消え、孤独を運命づけられた一族は二度と繰り返さないことが予告される。

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