『私にはいなかった祖父母の歴史―ある調査―』(名古屋大学出版会) – 著者: イヴァン・ジャブロンカ – 福元 健之による書評

書評総合

『私にはいなかった祖父母の歴史―ある調査―』(名古屋大学出版会) 著者:イヴァン・ジャブロンカ
20世紀の悲劇の連鎖のなか、二人はどのように生きたのか――繊細な文章と大胆な筋書きで紡がれる調査/物語
著者の姓ジャブロンカは、ポーランド語で「ヤブウォンカ」と表記され、「小さなリンゴの木」を意味する。マテス・ヤブウォンカ(1909年生)とイデサ・ヤブウォンカ(1914年生)は、かつてポーランドからフランスに亡命したユダヤ人だが、その孫にあたるフランスの歴史家イヴァン・ジャブロンカ(以下、ヤブウォンカ)は、二人に会ったことがなかった。20世紀の歴史の激流に呑みこまれたこの祖父母の真実を求めて、著者は調査を開始した。本書はその報告書であり、また家族の秘密に関する物語でもある。物語というものは、あくまで総体としてまるごと読まれるべきものなのかもしれないが、以下で本書の大筋を評者なりにまとめたい。
ポーランド、ユダヤ人、共産主義
20世紀前半ポーランドのパルチェフ。馬具職人だった祖父マテスは、その街で敬虔なユダヤ人シュロイメ・ヤブウォンカのもとに生まれる。当時のポーランドでは、反セム主義が吹き荒れ、ユダヤ人が経営する店舗への営業妨害が横行し、教育や法律の中にも差別が浸透した。そのため、この時代のユダヤ人青年によくみられたように、マテスは非合法のポーランド共産党に入党して、伝統的なユダヤ的生活様式や反セム主義に戦いを挑んだのである。そしてやがて党活動の中で、誰もがその美しさを口にしたイデサ・コレンバウムと出会う。革命で世界を変えるのだ。ソ連の同志たちと共に。二人はローカルな革命運動の主役に

リンク元

コメント

タイトルとURLをコピーしました