『新解さんの謎』(文藝春秋) – 著者: 赤瀬川 原平 – 森 まゆみによる書評

書評総合

『新解さんの謎 』(文藝春秋) 著者:赤瀬川 原平
つまった困った新明解
やられた、という感じである。三省堂の新明解国語辞典がオモシロイ、といいだしたのは仕事の相棒のヤマサキノリコで、たとえば「しじん・詩人」という項目を、私の持ってた岩波の国語辞典でひくと、「詩をつくる人」とわずか六文字。が、彼女の新明解第四版をひくとどうだろう。「しじん[詩人]、詩を作る上で余人には見られぬひらめきを持っている人。〔広義では、既成のものの見方にとらわれずに直截的に、また鋭角的に物事を把握出来る魂の持主も指す〕」とこうきちゃう。「魂の持主」というところ、ゾクゾクッとくる。で、われらが谷根千工房では「つまった困った新明解」を合言葉に、文をつくるためだけでなく、何か物事がうまくいかぬときは新明解をひき、それを拠り所に気持ちを立て直すという「新明解ごっこ」が流行っていた。赤瀬川原平さんはその、われらが隠微な楽しみを白日のもとにさらしてしまった。赤瀬川原平『新解さんの謎』(文藝春秋)の謎解きは、こんな具合にはじまる。深夜、知り合いの出版社員SM嬢から「わたしはいま、しんめいかいに来てるんです」と謎の電話が来る。彼女のまずとり出したのは、れんあい[恋愛]の項。「特定の異性に特別の愛情をいだいて、二人だけで一緒に居たい、出来るなら合体したいという気持を持ちながら、それが、常にはかなえられないで、ひどく心を苦しめる(まれにかなえられて歓喜する)状態」一読、「たしかに匂うね」と著者は反応する。かえん[火炎]には火炎ビンの作り方が書いてありかぞえ方一本と添えてある。これはこわい。新解さんは火炎ビンをつくったこと

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