『闇の底』(講談社) – 著者: 薬丸 岳 – 中条 省平による書評

書評総合

『闇の底』(講談社) 著者:薬丸 岳
犯罪前歴者が次々殺されて 
昨年、江戸川乱歩賞を受賞した薬丸岳の第二作(ALL REVIEWS事務局注:本書評執筆時期は2006年)。受賞作『天使のナイフ』は、妻を少年たちに惨殺された男を主人公にして、被害者の家族感情を無視し、未成年の犯人を過剰に保護する側面のある少年法の不備を鋭く突く作品だった。一方、本作は、幼女を強姦したり殺害したりしながら、社会復帰して再犯に走る性犯罪者の問題を扱っている。主人公の刑事・長瀬は少年時代、自分の不注意から妹を幼女性愛者に殺された過去の持ち主だ。その長瀬の周辺で、幼女への残虐な犯罪が起こるたび、性犯罪の前歴者が殺される事件が発生する。犯人はサンソンと名乗る。フランス史に名高い首切り役人の名だ。その名の通り、サンソンは見せしめに性犯罪の前歴者の首を切断する。捜査の結果、斬首された男たちに共通する過去が見えてくる……。過去のトラウマゆえサンソンに共感しかねない刑事・長瀬。サンソンをもてはやすマスコミ。劇場型犯罪への対応を迫られる警察。そしてサンソン本人の内心。多面的に絡みあう事件をスピーディに描きだす作者の腕は確かだ。この種のミステリーではどんでん返しはお約束だが、あなたは犯人を見抜けるか?【初出メディア】朝日新聞 2006年11月05日朝日新聞デジタルは朝日新聞のニュースサイトです。政治、経済、社会、国際、スポーツ、カルチャー、サイエンスなどの速報ニュースに加え、教育、医療、環境、ファッション、車などの話題や写真も。2012年にアサヒ・コムからブランド名を変更しました

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