『蝶コレクターの黒い欲望—乱獲と密売はいかに自然を破壊したか?』(河出書房新社) – 著者: ピーター・ラウファー – 栗原 裕一郎による書評

書評総合

『蝶コレクターの黒い欲望---乱獲と密売はいかに自然を破壊したか?』(河出書房新社) 著者:ピーター・ラウファー
蝶から見えた「危険な世界」
タイトルに偽りありとまではいわないが内容の一部しか表していない。じゃあ副題の「乱獲と密売はいかに自然を破壊したか?」が主題かというと、これもまた部分にとどまる。原題を直訳すると「蝶の危険な世界」となるが、評者が邦題をつけるなら「ジャーナリストと蝶の優雅な日々」くらいに落ち着きそうだ。著者のピーター・ラウファーは、戦争問題や政治問題について「ハード・エッジな本を数多く手掛けたジャーナリスト」(『ワシントン・ポスト』の書評より)で、ベルリンの壁崩壊後台頭したネオナチや、アメリカとメキシコの国境で移民排除に燃える愛国的自警団、イラク出兵を拒絶した兵士といったテーマを扱ってきた(本書以外未邦訳)。そんなハード・エッジな著者が「蝶」という接点のありそうもないテーマで本を書くことになったのは、書店で行われた朗読会が発端だった。イベントの終わり、イラク戦争に反対する人々の思い詰めた様子を見た彼は、反戦活動にも息抜きが必要であることを伝えようとして「次は蝶と花について書くつもりですよ」と思いつきを口にした。すると、その中継をC-SPAN(議会中継や政治を専門とするケーブル・テレビ)で見ていたニカラグアで蝶保護地を運営する米国人女性から「うちで一休みしませんか」と招待メールが届いた。この誘いをきっかけに著者は「蝶の危険な世界」へと足を踏み入れるのである。瓢箪から駒だ。ニカラグアを起点に、蝶にまつわる人々に芋づる式に取材を重ねた成果がこの本であるわけだが、

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